いつも顔を合わせてお話していたらいつのまにか恋しちゃうアレ

あさひやま動物記(1)  オオカミの森とホッキョクグマ@旭山動物園 (角川つばさ文庫)あさひやま動物記(1) オオカミの森とホッキョクグマ@旭山動物園 (角川つばさ文庫)
小菅 正夫 秋草 愛

角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-06-22
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他の子どもが騒ぐと五月蝿いけど、わが子だとそうでもないというのはよくあります。
聞き慣れた声で気にならないということもあるけど、それよりも、泣きわめく理由が想像できるからってことのが大きい。

何考えてるかわからないからイライラするんですよね。解決策もわからないし。
でも、理由がわかれば対応の仕方も察しがついて、今一時の心を持てる。
「お腹が空いたのね」「痛いね痛いね」「ああこれで遊びたいの」「・・・そうね、それならしょうがないね」

子どもがいる人が他人の子に対しても寛大になるのはその意味で道理だ。保育士たちが子どもに優しく見えるのは単に仕事上の理由からだけではない。
優しさは本能じゃない。経験と学習の結果です。関わり続けて相手を知ることで育む人間の叡智の結晶なんです。

■ 「旭山動物記(1)オオカミの森とホッキョクグマ@旭山動物園」(小菅正夫・著)

旭山動物園の前園長である小菅正夫氏の著作です。2010年6月発刊。
実は表紙のイメージから、子ども向けだろうと高をくくって読み始めましたがなんの、旭山関係書籍の中でもかなりよいぞこれは。

表題に(1)とありますが、以下続刊が前提なのかな。
おそらくそれが原因でしょう、旭山でもこれまで一般的には知られていない地味なエピソードが種類もページ数もたくさん載っています。劇場版ではなくテレビ放映で長期連載という前提からくるような、一見無駄と思えるエピソードを積み重ねて深みを増す方式。

書名にこそ旭山の行動展示の代名詞的なオオカミとホッキョクグマの名前があるけれど、読むと行動展示の話は脇役です。あくまで主役は動物たち。しかも「地味」な動物。
オオカミやホッキョクグマもたいがい地味だけど、ほかに取り上げられているのもキリンやチンパンジーやカピバラ、フクロウなどですよ。
交尾、出産、子育て、病気、死、そして飼育員の葛藤と試行錯誤。とくに「珍しくもない」動物と人間の関わり、動物と動物の関わり、営みが延々と描かれています。

退屈そうな内容に思えるかもしれない。
でも、芝居だけして完璧でスキがない役者より、バラエティに出てちょっと失敗したり、自宅公開をして恥ずかしい趣味を露呈している役者に親近感を憶えるように、素の日常に関わるからこそ気持ちが近づくことがあるじゃない。

僕はこの本を読みながら、子どものころ「シートン動物記」の「狼王ロボ」のエピソード(ご存じですよね)に執心していたことを思い出しました。

ロボを知る前、僕にとってオオカミは悪者でした。ヒツジの子を食べたりブタの子を食べたり赤いずきんの女の子を食べたり、なんて非道いヤツだ。

でも狼王ロボは違った。いや物語内でロボを正義に描いているわけじゃない。
動物としてのオオカミの生き様、ロボという個体の個性を、シートンの目線で淡々と描いていただけです。結果、前よりちょっとだけオオカミ(ロボ)という動物に詳しくなった。
するとロボたちの行動に必然性を感じました。

もはや家畜を襲うロボたちを否定できなくなっていた。彼らには家畜を襲う理由があった。彼らだって家畜を食べなければ生きていけないんだ、みたいなね。
いつのまにか僕は、むしろ彼らを応援していました・・・。
ロボが、オオカミが僕のヒーローになってしまっていたのです。

相手を好きになる情報を僕は知識と言っています。知識というのは、人に今一時の心を与え、優しい気持ちにしてくれるものなんだ。
「あさひやま動物記」、この本は動物の知識に溢れています。

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