しみじみと「ひと」が好きになる辞典

あべ弘士 どうぶつ友情辞典あべ弘士 どうぶつ友情辞典

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★★★★☆

 元旭山動物園の飼育係で絵本作家のあべ弘士のエッセイです。

 「獅子」「豹」「虎」からはじまって、「梟}(ふくろう)」「蜻蛉(とんぼ)」「鯰(なまず)」に「土竜(もぐら)」と、陸に海にほ乳類から昆虫まで全36種の動物との交友録です。
 それぞれの動物の話が、1行から1ページ足らずの短い複数の節で構成されています。面白いのがその節の分け方が実に節操がないことです。
 「獅子」の話の場合、「百獣の王」とあたりまえのところから、「獅子身中の虫」「獅子の子落とし」といった諺や慣用句にまつわる話、そして「ライオン石鹸」や「銀座ライオン」など、もはやライオンとかどうでもいい内容にまで広がっている。なんとまあ、い(良)い加減な。
 そういうわけで、彼自身の牧歌的風貌と、そのあたたかな絵柄から期待した通りの、お気楽話ばっかりでした。ほっこりするよ。
 ちなみにイラストのページ(カラー)もちゃんとあるのが嬉しいですねー。

 さあ、しかし、さすが元飼育係です。野生の命と真っ向から渡り合ってきた男の話ですから、こんなこと書いて大丈夫?という危うい話もチラホラあります。

 たとえば、水鳥舎にカラスが餌を奪いに来るのを防ぐために、以前水鳥舎の壁に激突して死んだカラスを冷凍保存しておき、餌を盗りに来たカラスの目の前で再び壁に激突させる。当然落ちて動かなくなる冷凍カラスを見て、ここは危険だと仲間カラスに思わせた話なんてのがあります。冷凍カラスて。
 他にも、陸ガメが死んだとき、原因究明のために冷凍保存していたら、ちょうど(旭川)市の監査が入ったものの、カメは書類上はまだ生きていることになっているので、冷凍カメを置いてごまかしたなんてのも。「監査委員は素人だ、わかるまい」つって。ヒドイ(笑)

 「エコ」やら「動物のすみかを守ろう」やら「かけがえのない命、大切に」やらの、聞こえのいいフレーズに慣れた僕らには、なかなかに衝撃的な内容だ。


 でも考えてみたら、誰に迷惑をかけた話でもないし、命に対しても不誠実では決してないと思う。
 もし僕らが食事のとき、ちょっと前まで生きていた死体をつかまえて、ウマイはともかくマズイなんて一定値あら、そっちのがよっぽどヒドイ話だ。


 もちろん基本的には、こんなショッキング(笑)な内容はごくわずかです。むしろ、動物の楽しい話ばかりです。
 特に僕はこんな話が好きだなあ。

 『このツイーーッという翔び方は、カワセミにしか似合わない。同じ水面を翔ぶトリでも、カワガラスならヒョイーン ヒョン ヒョンだし、アオサギならバファラン バファランだし、コチドリならチョィンツ チョィンツだし、カルガモならパタパタパタパタ、子連れならパタトトパタトトトトパトトトだし、そんな翔び方で、誰もツィーーッとはならない。』

 『日本語、特に漢字表記する動物名には、うーむと感心させられるものが多々あって、わたし、とても興味があるのです。[中略] 鳥もたくさんあって、郭公(かっこう)、雲雀(ひばり)、百舌(もず)、水鶏(くいな)、大瑠璃(おおるり)、雪加(せっか)。啄木鳥(きつつき)なんて字面見ただけでそれとわかる。丹頂(たんちょう)はそのまんま。信天翁がアホウドリとはなんでそうなったの?[中略] 虫もいい。髪切(かみきり)、邯鄲(かんたん)、天道(てんとう)、蜉蝣(かげろう)、いい名だ。落文(おとしぶみ)、さすが日本。[中略] 土竜、あなたなぞ、天下一品です。』

 いいわあ、こんなシビレル話が目白(めじろ)押し。
 どこがいいのかって、そりゃアナタ、動物見るだけでこんなに違いを見つけたり妄想したりする生き方ができてごらんよ。毎日道中ザッツエンターテイメント、四六時中がバラ色ですわー。


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