待て!待て!待て! 閉園だと? そんな事!

いとうづゆうえん日記―ありがとう動物たちいとうづゆうえん日記―ありがとう動物たち

西日本リビング新聞社 2000-04
売り上げランキング : 935524

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★★☆

「ありえない なんて事はありえない」 そのグリードって人の言葉だよ。
ボクもありえないと思ったけどたしかに見たんだ。
いとうづゆうえんはすごい再生能力を持ってた・・・!!


僕にとって動物園とは行かないと禁断症状が起きるような場所なんだけど、一般的にはたぶん違うよね。

近年、旭山動物園のおかげで、動物園に注目が集まっています。
けれど旭山以外のほとんどの動物園が赤字ということをご存じかしらん。上野動物園ですら例外ではない。
旭山には他都市からも人がわんさか集まるのに、ほかは赤字というくらい人が集まらない。これって残念だけど、動物それ自体が注目されているわけじゃない。動物を見たいなら、わざわざ北海道じゃなくて家の近くの動物園でもいいはずたもの。


かつて僕の住む北九州市には「いとうづゆうえん」という遊園地のある動物園がありました。街のほぼ中心地に位置し、誰でも気軽に行ける場所でした。市民なら一度ならず行ったことのある場所と言っても過言ではなかった。
それが2000年、経営不振で閉園しました。
驚きました。でも、地味、環境破壊、金食い虫と、動物園への風当たりは厳しくなっていたことも子どもながらに憶えています。
だから閉園と聞いても、意外に思った人はおそらく少ない気がします。

ところがある意味必然のこの事態に、なぜか市民は納得しなかった。存続の声が高まり、運動が起こり、やがて市を動かしたのです。そして再び開園した・・・!
「いとうづゆうえん」は、もともとの経営主だった旅客会社から北九州市に運営が移管され、「到津の森公園」として蘇り、いまに至ります。

なぜ市を動かすという前代未聞なことが実現したのか。


やっと手に入れたよ、憧れの絶版本!! ブックオフ万歳。
■「いとうづゆうえん日記―ありがとう動物たち」(西日本リビング新聞社)

この本はいとうづゆうえんの閉園の年(2000年)に出版されました。
その歴史に幕を下ろしたいとうづゆうえんへの感謝と、すでに決まっていた到津の森開園へ期待とエールを送る一冊です。

本は二部構成から成っています。
第1章は「どうぶつえん日記」。1993年4月から1997年3月にかけて、リビング北九州という生活情報フリペーパーに連載された飼育員のコラムです。
第2章は「わたしの思い出」として、おもに公募で集めた市民によるいとうづゆうえんの思い出の手記が掲載されています。
創生期からの貴重な写真もたくさん載っていました。

「どうぶつえん日記」は毎回一種の動物を扱っています。
読んでまず思ったのは、いとうづにはこれほどの種類の動物がいたのか!ということ。記憶をたどると確かに見たことある動物だ。ああ、懐かしい。これだけでも北九っ子にオススメしたい。

さらに、文章はどれも「コラムとはかくあるべし」という珠玉のものばかり。
単なる一般的な動物紹介、あるいは奇をてらった一過性の客寄せ(レッサーが立った!とか)にならぬように配慮されています。
800字に満たない長さのなかに、題材となる動物の学術的な情報、いとうづゆうえんにいる個体の個性溢れるエピソード、実際の飼育技術、職業人としての心構え、市民への願い、とにかくいろんなものがぎっちり詰まっています。でも終始一貫しているのは動物への献身ですね。動物って、こいつってホラ、こんなにすごいんだよ! 筆者である飼育員たちの自信満々の笑顔が浮かびます。
だからか読後はいつも同じ気持ちになる。ここに書かれている動物たちに、会いたい・・・!
見たいわけじゃない、会いたい。これはとても大事なこと。彼に、彼女に会いたい。ほかの誰でもない君に会いたい。友達になりたいんだ。
動物たちの魅力にもうメロメロですよ。

そして次章が「わたしの思い出」話です。つまり「友達」と出会ったときのエピソード。飼育員のコラムから自然な流れで読み進めちゃってるよ。
ここに書かれているのは一般市民の思い出話です。
どの思い出話も、北九州市民にとっては、たぶん、「わが家でもあたりまえ」といった話しばかり。寄稿者と世代が違う僕でも共感する話ばかり。つまり僕の思い出だ。(違う)
誰もが共通の、そして豊富な思い出のあるだいじな場所だったんですね。

だから「閉園」のニュースのとき、すぐさま市民が立ち上がった。しかも一時の盛り上がりで終わらずに存続運動が継続した。
いとうづゆうえんは69年でその歴史を閉じたけど、すべての世代の市民が、子どものころここに親しんだ。だからすべての世代が存続を支持したのでしょう。
動物を愛おしく思って欲しいという動物園の愚直な思いが、最終的に動物園自身を救った。

そしていま、到津の森公園は黒字経営です。


なお、市民運動の側から見た、いとうづゆうえん復活の具体的な理由と経緯は、「到津の森の詩―市民の森・到津遊園が育んだ児童文化と環境教育」(向陽舎)に詳しい。興味のある方はコチラの記事もどうぞー。


到津の森公園 公式サイト
http://www.kpfmmf.jp/zoo/

関連記事
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する