旭山的人類補完計画(旭山動物園園長トークショー・その2)

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2010年11月に北九州小倉の老舗百貨店・井筒屋で開催された旭山動物園・坂東元園長のトークショーについて、気軽に思い出トークしようとしたら止まらなくなりました。全2回の予定でしたが、全3回は要するわコレ。
じゃあ、いってみよー。


■君に届け~オランウータンの恋の駆け引き

一を知ってすべてを知ったと思うより、一度全体を見たうえで、その中の一に目を凝らす。そのほうが同じ一を見ても深い理解と感動が得られる、それが前回の最後の話でしたね。ペンギンのかわいさの話ね。

ペンギンの次に、坂東さんは旭山のオランウータンのペアリング(恋仲化)の話を紹介しました。
このエピソードをどうまとめようかなあと思ってたら、旭山の公式サイト内で坂東さんが、経緯をわかりやすく書いていましたので以下引用。

--------------------<引用 ココカラ>--------------------

 さて、オランウータンです。日本では雄親と、母子を一緒に飼育することは一般的ではありません。野生での単独生活という習性や、同居して子供が殺されてしまった話や見た目の体格差や、とにかく一緒には飼育できないという固定観念がありました。ところが欧米では同居が当たり前です。出産の時すら雄を同居させたままとの情報を得ました。僕たちは野生でも雄と母子が出会わないわけはないし、他のサル類のような父子のコミュニケーションはないにしろ、同居は不自然なことではないのではないだろうかと思っていました。モモが生まれて約一年半、午前中にジャックを午後からリアンとモモを放飼場に出していましたが、外に出ている時間が短く、とくにジャックはリアンに会えないこともあってかいらいらしていることが多くなっていました。「ならば」と一緒にすることにしました。
 寝室内でのお見合いの後、9月5日朝8時、まずリアンとモモ次いでジャックを放飼場に出しました。リアンはちょっとビックリして間合いをとります。ジャックはリアンのすばしっこさにはついていけないことを自覚しているので、興味津々なのですが追いかけません。そしてジャックとリアン最初の同居の時のように「いじけ作戦」を開始しました。小さくなっていじけているジャックを見てリアンはモモを抱っこしたままじわじわと近寄ります。目と鼻の先まで近寄ってもジャックはじっと耐えています。「僕は何もしないよ」目が訴えています。でも耐えきれずに手がピクリ、リアンはサッと離れてしまいます。ジャックはロープや木に八つ当たりをして、気を落ち着けてまたいじけ作戦です。そんなこんなで同居は成功しました。

引用元:旭山動物園公式サイト内「ゲンちゃん日記」平成16年10月分
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/zoo/genntyann/sc02_gen5.html

--------------------<引用 ココマデ>--------------------

オランウータンの雄雌は体格がまったく違う。雄はバカにでかくて力も強い。雄にとって雌なんて、その気になればコキュッっとね。
雄が圧倒的に優位だから、オランウータンのペアリングは難しい。下手した雄が雌を殺しちゃう。ペアリングの際、雄に精神安定剤を使うことも一般的で珍しくないそうです。
しかし旭山では薬の力を借りずに成功しました。坂東さん曰く「勝算があった」そうです。マジか。
「勝算」とは、野生のオランウータンの生活を学んだり、海外の事例を収集したり、自園での彼らの行動を観察した結果得た「確信」です。さらに引用文にはありませんが、旭山独特の勝算もあったようです。
それは、旭山のオランウータンの展示が3D(立体的)だということです。

実は雌のリアンは旭山育ち、雄のジャックは安佐(広島)育ち。
雌のリアンは子どもの頃から旭山名物の行動展示で綱渡りの環境下にあった。でも雄のジャックは檻の中で地面に接した生活をしてきた。ここに雄雌の優位の逆転が起きるだろうと踏んだということです、つまり雄が暴れても、雌は雄の手の届かない場所に容易に逃げることができる・・・!

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こういう状況でのジャックの「いじけ」、恋いの駆け引きなのです。
そして駆け引きとはすなわち、彼らはものごとの因果関係がわかるということにほかならない。

もうね、話聞いてて大興奮ですよ。すごいすごいつって。講演会場で気分だけはスタンディングオベーションですよ。
坂東さんたちは、オランウータンを、なによりリアンとジャックという個体を知ろうとしたのです。「この動物はこう」と決めつけなかった。その姿勢に嫉妬と羨望と尊敬です。
坂東さんは、姿形だけではなく、このような生き方をまるまる伝わる展示を動物園でしたいのだと言っていました。ぜひお願いします。


■まごころを、君に

このあとも「サルだけが抱っこして子どもを育てるほ乳類なんだ」とか、「動物は母親の食べているものをおいしいと思うよう学習していく」とか、動物の話なのか子育て支援の話なのかわかんなくなるような面白い話がたくさんありました。そりゃ両方とも命と真っ向から関わる仕事ですからね、話が重なるのは必然か。

命といえば、坂東さんは最後に命について時間を割いて語りました。
「命を伝えるとは生を伝えること、生とは死ではない状態のこと。だから命を伝えるとは死を伝えることでもあります。だから旭山では動物が死んだら、死んだ個体の死亡日や名前を喪中と掲示します。」
この「喪中」は、旭山の取り組みのなかでも、比較的有名な話です。批判もけっこうあった(ある)ようです。

ええい、黙れ。僕は、これはとってもいい取り組みだと思うんだ。
僕たちが動物園で見るのは単なるオランウータンじゃない。ジャックだったりリアンだったりする、それぞれが代わりのきかない存在だ。
いつまでも死なない生き物はいない。生は有限だ。有限の生だからこそ、関わる時間も有限だ。いつか会えなくなるかもしれないし、それどころか今日が最後かもしれない。だからひとつひとつの出合いに真剣になれる。真剣になれば相手をよく見る、相手をより知る。そして知とは愛だと僕は言った。

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でも・・・、ぶっちゃけ一緒に過ごした日々が真剣であればあるほど、死んで会えなくなるのは悲しい、寂しい。こんな気持ちになるくらいなら、適当につきあっておけばよかった。お願い、生き返って。

それならやはり、個体ではなく種として展示するのがいいのかな。

違う。坂東さんならこう言うだろう。「ある個体の死を認めることは、その彼の生を認めることだ」と。
生を認めるとは、彼が確かにそこにいたという存在を認めることだ。存在を認めたとき、彼は時間も空間も超える。僕たちは言う。「心の中に生きている」 こんなでっかい愛があるか。

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そしてそれは「彼」と過ごした自分の過去を認める、すなわち自分の存在を認めることでもある。僕はここにいてもいいんだ!w

なんか胡散臭くなってしまったけれども、生まれたら死ぬというあたりまえ、これを伝えることが動物園だと言う坂東さんを、僕はとても格好いいと思うのですよ。



終わった? いやまだだ、すまん。終わったなのは第一部、坂東さんひとり語りの部分だけ。
次回、第二部に突入!!
ついに(俺的)世界一の動物園・到津の森公園の岩野俊郎園長が登場する・・・!(勝手にしろ)

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※本文中の画像は、昔どっかで描いた絵描き掲示板での絵を使用してみました。一部の方にはお久しぶりです。またああいう祭りやりたいねぇ。

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