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「DEEP BLUE(ディープ・ブルー)」

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アラステア・フォザーギル

東北新社 2006-06-23
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 制作期間7年、撮影チーム20隊、ロケ地200カ所、撮影フィルム7000時間という、その数字だけで超大作感を実感できるというもの。それだけ手間暇をかけて何を撮ったかというと「自然」なわけだ。「大」をつけたほうがいいかもしれない。「大自然」だ。どっちでもいいか。
 もちろん深海5000メートルだったり、陸地が皆無の見渡す限りの海原だったり、とても生身の人間が関わりをもてる場所ではない。でも撮ってるのはただの「自然」だ。自然ってなんだと言えば、ありのままの日常ってことだ。それが「壮大なドラマ」として公開され、あまつさえ多くの人々の感動とやらを喚起する。これってすごいよなあ。あたりまえのことを見て、あたりまえじゃない心の動きをしてしまう。

 各シーンを取り上げればキリがないほどの映像が溢れている。餌(魚)をとるために海にロケットみたく滑り込む鳥たちや、海中を飛ぶペンギンとか、何千万匹もの鰯(いわし)がいっこの大きな生き物が踊るが如く一斉に動いたり、漆黒の暗闇の中発光するクラゲとか、視界すべてを埋め尽くすほどのカニが大行進したりだとか、生まれたばかりのアシカをシャチが襲ったりだとか、それはもうすごい。こんな世界が私と同じ次元に存在していたのか、という衝撃。マここに映っている映像は常に命のやりとりなんだ。平和ぼけした私が圧倒されるのも無理はない。てことはヤクザもんならショックは少ないのか。どういう理屈だ。

 この映画の映像は、インフォメーションとしてはかなりポイントが高い。知らないを知るということね。でも映画としてはどうかなあ。それぞれの映像がぶつ切れ。シーンが変わってスクリーンに登場する生物が変わった途端に、それまでの「流れ」はなくなる。数分のショートショートストーリーを何十個と数時間繋ぎました、と言う感じ。オムニバス祭りだ。オムニバスとはひとつのテーマに沿ってということだっけ。この場合は海の神秘、命の不思議と自然の摂理ってことか。良く言い過ぎかも。単に「レア動画だよすごいだろホラホラ」という感じ。
 映像のバックに流れるベルリン・フィルハーモニーの音楽も気にくわない。音楽性がどうのこうのではない。あくまで映画音楽としてなんだけど、強い。とにかく強い。自然をとりあげ、その営みを表したいのであれば、あんなゴージャスはいらない。自然とはそれだけで音楽だ。完璧な音楽。風のささやき、波の調べ、吐息、咀嚼音・・・すべてが音楽。無理に感情を演出する必要はない。

 自然というあたりまえなことって、たしかに奇跡だと思う。ただそれでもあたりまえなわけだ。あたりまえのことを、あたりまえじゃないことのように過剰に語ってる気がするのがこの作品だ。と言っても過剰に語ってると思ってるのは私で、それは私が過剰に受けとってるだけっちゃあそうなんだけどな。

 なんだかんだ言って一見以上の価値はある映像群なので安心されたし。次から次に映し出されるその世界はやはり飽きない。

 とか言って、遺伝子操作で巨大化し利口になった鮫が、嵐に見舞われて孤立した研究施設を襲うアッチのが好きだけどね、私ゃ。


同記事の画像ありバージョン(旧サイト)
http://gon623.fc2web.com/cinema2/cinema127.html

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