動物の見方の理想型

旭山動物園12の物語 (角川ソフィア文庫)旭山動物園12の物語 (角川ソフィア文庫)
浜 なつ子

北の動物園できいた12のお話 旭山動物園物語

by G-Tools

★★★★★(満点)

すでに旭山動物園が有名になりつつあった2005年11月発行であるが便乗販売じゃない。なんとまあ、地に足の着いた内容であることか。

旭山動物園では2004年までに「ととりの村」「もうじゅう館」「ペンギン館」「 オランウータンの空中運動場」「ほっきょくぐま館」「あざらし館」がすでに完成していた。とくに、2004年は「あざらし館」がメディアで取り上げられ、初めて月間入園者数が上野動物園を抜き日本一になった年である。
翌2005年には「おらんうーたん館」と「くもざる・かぴばら館」が完成した。

そういう時期に出版された本である。いわゆる旭山フィーバーまっただなかだ。たくさんの旭山関係の出版物が世に出た。そのいくつかを私は読んだ。念のために言うが、私が読んだものの多くは良質のものであった。
それを踏まえてあえていう。この本は特にいいわー。

小菅(こすげ)名誉園長や坂東園長、絵本作家で同園の元飼育係だったあべ弘士さんなど、旭山に関わる人間たちの思いがこれほどストレートに書かれている本は、関係者本人たちが著したものを除いては、読んだことがない。

野生動物はペットじゃない。野生動物は野生動物として潔く生きている。動物園の動物たちは“かわいそう”ではない。カラスだって大切な生き物、パンダやコアラのようにすばらしいしおもしろい。生きている動物を擬人化するのはやめよう。ほ乳類だけでも約4,000種、つまり4,000通りの生き方がある。野生動物と人間はどうやって共生したらいいのだろうか。野生動物とはなにか、ヒトとはなにか、生態系とはなにか。動物園でいちばん大事な役割は、来た人に、にこにこ笑ってもらうこと。

同園がいつも声を大にしていっていることが、そのままの形で記されていると思う。
何度も読んで、そして動物園に通って、じっくりと味わいたい本だ。


ちなみに商品リンク2冊の題名が違うけど、これはハードカバーか文庫かの違い。
「北の動物園できいた12のお話 旭山動物園物語」(2005年刊)というのがハードカバー版タイトルで、「旭山動物園12の物語」(2008年刊)は文庫版タイトル。なぜか名前が違う。
園名が前面に出ている文庫版のほうが後発だから、やはりこれは商業的な理由からなんだろうね。

私がもっているのはハードカバー版ですが、最近購入したためか、映画「旭山動物園物語-ペンギンが空を飛ぶ」(主演:西田敏行)の帯がついてた。なんという役者不足の帯だ。
この本を読むと、あの映画の描写が、いかに見る者に野生動物に対する誤解を与えるものだったか、改めて痛感した。映画のすべてのエピソードは、確かに事実を下地にしたものだった。でも描き方がマズイ。動物が人間のような感情をもっているように、終始擬人化が徹底していた。

動物をヒトとは異なる存在だ。ヒトとして描いちゃいけない。
淡々と事実を記し、素直な自分の気持ちを添えるだけでいい。
そして、この本はそういうお話が12も詰まっています。
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