冒険者たち

冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫 (044))冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫 (044))
薮内 正幸

グリックの冒険 (岩波少年文庫) ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)

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★★★★★(満点)

しっぽをたてろ!

この言葉を聞くと、心がぐわわっと沸き立つ諸兄も多いと思います。誇りとか勇気とかが奮い起こされますよね。

しっぽをたてろ!
1975年に放映されたアニメ「ガンバの冒険」を象徴する名文句です。
「ガンバの冒険」とは、ある島を暴力と恐怖で支配する白イタチのノロイを倒すべく立ち上がった7匹の勇気あるネズミたちの物語。

子ども心に敵役・ノロイの悪魔的な恐怖は夢に見るほどでした。そのノロイの圧倒的な恐怖に立ち向かう勇気の物語は、かつての子どもたち(私だ)の心を今でもとらえて離さない。

当時の大人たちにも少なからぬ衝撃を与えたようです。
チーフディレクラー・出崎統の演出は時代を超えた。「ハーモニー」と呼ばれる止め絵の効果や、少ないセル枚数での見事な動画表現(3枚のセルで4足歩行のネズミが走る姿を描いた!!)など、その驚異は枚挙にいとまがない。
出崎氏とは「あしたのジョー」や「宝島」など、多くの日本を代表するアニメに関わった偉大な方です、言うまでもないんだろうけど。

アニメ「ガンバの冒険」なくして日本の(=世界の)アニメ史語るなかれ、それほどの作品です。
でも、あれ? 今回は小説の話だったっけ。

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アニメ「ガンバの冒険」には原作の小説があります。斉藤惇夫・著「冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間」です。

内容は当然アニメとほぼ同じだが、もちろん違う点もいくつかあります。
たとえば敵役ノロイの恐怖の質が違う。
アニメでは圧倒的な残虐性をもつ暴君です。マンガ「うしおととら」の「白面の者」(見た目もソックリ)のような恐ろしさです。わかりやすい目に見える恐怖です。
対して小説では静かな忍びよる恐ろしさで描かれています。何を考えているかわからない得体の知れない恐怖です。個人的にはマンガ「ドラゴンボール」で、フリーザが最終形態になった直後と同等の不気味さがありました。理性的だけど何を考えているのかわからない底が知れない感じ。

でもどっちが優れているということではありません。アニメも小説もどっちもいいんですよねえ。どっちも根本は同じ。熱い勇気の話ですし。


ところで「冒険者たち」は実は斉藤惇夫三部作のひとつです。
「グリックの冒険」「冒険者たち」「ガンバとカワウソの冒険」の三部作でひとまとめ。というか「グリックの冒険」の脇役だったガンバがあまりに魅力的だったため、スピンオフとして「冒険者たち」以降が書かれたそうです。

「グリック」はリスのグリックの話。
飼いリスのグリックが、北の森で暮らす野生のリスの話を聞き、自分の「本当の」ふるさとである北の森を目指します。その旅の途中でグリックが出会い、少しだけ行動を共にし、彼を導いたネズミがいました。それがガンバです。

「カワウソ」は「冒険者たち」の直接の続編です。
ガンバとその仲間たちが、行方不明のネズミを探す旅の途中で出会った、絶滅したはずのカワウソとともに、伝説の川「豊かな流れ」を目指す冒険譚。

作品発表順だと「グリック」「冒険者」「カワウソ」ですが、時系列的には「冒険者」「グリック」「カワウソ」の順となります。

実は今回、「冒険者たち」の前に、第一作である「グリック」から読み始めました。正直「グリック」にはそこまで期待していませんでした。ところが、なんだこのおもしろさは。
甘っちょろいグリックの成長の過程はもちろん、脇を固めるヒロインのんのん(リス)や、鳩のヒッポーというのも魅力的でしょうがない。
「グリック」から「冒険者たち」へ、読み終えるまで2日と要さないほどハマった。両方ともけっこう厚めの本なんですけどね。

余談ですが、「カワウソ」は読み終わるのにちょっと時間がかかりました。
たぶん、すでにノロイという最高の宿敵を倒したガンバたちを、私が「挑戦者」として認識できなくて、少しテンションが下がったことが原因です。防衛より挑戦の過程のほうが燃えるでしょ? 「マトリックス」も成り上がる1作目がいちばん好きやもん。
でもおもしろいことには変わりないんですけどね。
実際、いまや動物園でカワウソを見ると、自分でも信じられないくらいテンションが上がるようになりました。


ガンバたちは当然擬人化されているわけだけど、擬人化のルールには対象読者(子ども)への配慮がありますね。ガンバのエサとなる生物は擬人化しない、とか。
あと児童文学であるから一章あたりの文量は少ないし、言葉遣いも平易で読みやすい。幼稚だと嫌悪感を覚える人もいるだろうけど、もったいないよ。名作です。


そう言えば、さっきノロイを喩えてマンガ「うしおととら」の「白面の者」と言いましたけど、もし「うしおととら」が好きなら、この三部作は絶対オススメです。
なかでも「冒険者」は「うしおととら」の最終章を読んでいるような高揚感でしたもん。

「オレは… まっすぐ…立ってるか…? 」
「おまえたちの旅は無駄ではなかった」
「今、オレ達は・・・太陽と一緒に戦っている!」
「もう完璧だ。白面、来い!」」

この台詞って「冒険者たち」の台詞でしょ?(うしおととらです。)

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原作者である斉藤惇夫(あつお)は、長年子どもの本の編集者として活躍してきた方です。
彼が著作「現在(いま)、子どもたちが求めているもの―子どもの成長と物語」で言っていたことがあります。引用は正確ではないですが、大意は次のような感じ。

「なぜ絵本の読み聞かせが必要か。それは子どもにとって大人は水先案内人だからです」

つまり、子どもは信頼できる大人(親)とだからこそ、未知の世界に旅立つことができると言うのです。
ああ、なるほど!! パパやママと一緒だから鬼とも戦えるし、竜にも臆さず立ち向かうし、暗闇でもずんずん進めるんだ・・・!!
そして独りじゃないから、楽しいことはより楽しいし、悲しみは半分になる。

斉藤先生! 子どもと一緒に絵本読みたくなりました。
こんな素敵な児童文学家の、しっぽが奮い立つ話。2週間前(2009/4/18)に生まれた息子にも、成長したらぜひ読んで欲しいと願う。



最後にちょっと余計なお世話。
「ガンバの冒険」シリーズ、子どもが読むならハードカバーの大型判がオススメですが、大人の方ならぜひ文庫版を。
実は文庫版にだけ斉藤先生自身のあとがきがあって、そこには作品のできる経緯が少し描かれているんですが、これがおもしろい!
文学に言い訳じみた解説は不要!という確固たる信念をもつ方以外はぜひ文庫版を。一読の価値あり。


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斎藤惇夫

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