旭山動物園にみる行動展示の本質とは

【旭川市旭山動物園 1・総論 2・デザイン 3・動物 】

130919_24.jpg

前回までのあらすじ:旭山動物園のことについて書いているのに動物の話がない。あーいい天気。

130919_25.jpg 130919_26.jpg

旭山で最初に見たのが「ととりの森」、1997年に完成した行動展示の第一弾だ。
・・・想像以上だった。

広い。どこまでも歩ける。いや、どれだけ鳥が自由にはばたいているんだ。

130919_27.jpg

130919_28.jpg 130919_29.jpg

旭山の行動展示の特徴としてよく耳にしていたのが、動物をさまざまな角度から観察できること。
これも・・・想像以上だった。

角度の豊富さの桁外れさもすごいが、観察ポイント間の移動のスムーズさたるや。
ストレスを感じさせない経路設定も見事だが、どうしても壁が多くなる場所にはしっかりとした解説的装飾が施されているのがお見事だ。どれだけの事前の推敲を重ねたのか。

130919_33.jpg 130919_34.jpg

チンパンジーも俯瞰、下から、彼の間合いw とこれほどあちこちから眺められるとは思わなかった。
写真は屋外のものだが、屋内展示も同様の多様さだ。

130919_30.jpg 130919_31.jpg

余談だがアザラシの「もぐもぐタイム」(エサやり)のときは、会場となる地上も楽しいが、実は地下がオススメ。
ほぼ貸し切りでございますw

しかしこんなに縦に泳ぎまわるアザラシ展示は見たことがない。

130919_40.jpg 130919_41.jpg
130919_42.jpg 130919_43.jpg

ホッキョクグマは顔についた気泡が見えるくらいの至近距離で大暴れしていた。
シロテテナガザルは天翔ける竜が如く上空をところ狭しと駆け巡っていた。
動かない動物はいないのか、ここは。

130919_44.jpg

実は僕が立ち眩みがするほど衝撃を受けたのが「サル舎」だ。
かなり昔から使っている檻だろう。しかし、おそらくかつては細かく区切られていた檻の仕切りを取っ払った。
そうすることでサルが縦横無尽に跳び、走りまわれる広さになっていた。もちろんサルの特性に応じて遊具やロープを配置して動きを引き出すことを忘れない。

しかも原始的なワオキツネザルからアビシニアコロブス、ブラッザグェノンとサルの仲間の進化の過程を観察することができる施設になっている。

発想なんだよなあ。どこまでも。
動物にどこまでも寄り添おうとしてるからこそ可能なのだろう。

130919_35.jpg 130919_36.jpg

ネコ科展示の「もうじゅう館」のあたりは、まだPOPが昔ながらのものだった。つまりイラストが劇画調だった。
とはいえ、展示が古いわけではなく、ここでもやはり近くで動物の自然な姿を見ることができる。

写真はアムールトラの牙ちらりとクロヒョウの模様だ。
クロヒョウはヒョウと同じく、よく見たら模様が見えるというのはいまやもう有名な話だ。しかし実際に見るとやはり「おお」と感動する。

130919_37.jpg 130919_38.jpg

ライオンはくつろいでいた。
実は旭山から帰った1週間後、あべ弘士さんとお会いする機会があった。そのとき大変失礼な話だが、手元のコースターに絵を描いていただいた。

130919_39.jpg

ライオンの額から鼻のラインがまっすぐで、うまいことデフォルメするなあと思った。
実際はコレほどまっすぐじゃないだろうが、このラインのおかげでいかにもライオンっぽいと。

違うし。まっすぐじゃん本物。デフォルメどころかスーパーリアリズムじゃないですか。

130919_45.jpg

「オオカミの森」の<裏山感>にも唸った。
展示というより、自然の中で出会ったような雰囲気だ。でしょ?
オオカミたちは眠ったり、伸びをしたり、走ったり、吠えたり、さまざまな日常を見せてくれる。

130919_46.jpg

オオカミの近くにはエゾシカもいる。(仕切りはあります。)
100年前の北海道には存在したエゾオオカミとエゾシカの共生を感じてもらい、エゾオオカミを滅ぼしてしまった僕らの過ちを忘れないためだという。
重い。しかし嫌いじゃない。動物を見るときの目線がちょっとだけ真剣になるから。

動物たちの今の日常を見ることができる。
動物たちのかつての日常を想像することができる。
ひいては動物と人間の未来の日常に思いを馳せる。

こうした命の営みを感じてほしいというのが、旭山の展示だ。
行動展示とは動物本来の能力を展示すること。つまり自然な姿、営みだ。

130919_47.jpg 130919_48.jpg
130919_49.jpg 130919_50.jpg

オランウータンの屋内展示場でこんなことがあった。
母リアンに息子モリトがじゃれるが、相手にしてもらえなかった。そこでモリトはひとりで遊びはじめた。
腕だけでぶらさがって遊ぶのはよかったが、自分の力を過信しひとりでは登れなくなった。
助けを呼ぶモリト。一瞥はするが気にせず自分の用事に没頭するリアン。
再度自力で脱出を試みるが失敗、腕が伸びきってもうどうにもならない。限界。なく、なく、なく。
やっとリアンががすっと手を伸ばし、モリトを引き上げる。

一緒に見ていた来園者みんなで大笑いするとともにほっとして、思わず舎内にタメ息と拍手があふれた。
これ、よく考えたらすごいよね。ちょっと感動しませんか。震えがくるほどに。

これが営み展示だ。
あくまで目の前の<個体>間の関係をとおして、動物の種類や生態、環境に目がとどく展示だ。
行動展示の、いやいまの動物園の動物展示がめざす姿とはこうあるべきだ。すくなくとも僕はそう思う。

130919_51.jpg 130919_52.jpg

最後に「動物図書館」のことを書こう。
図書館・・・。動物園に本があるのは珍しいことではない。しかし旭山の充実度はなんだ。
絵本、図鑑、専門書、旭山の発行物などがそれぞれきちんと分類されて展示されていた。(閲覧のみ可)
ほかにも工作や映像も、備品や装飾だってぬかりなし。楽しすぎ。1時間くらいいた。家族旅行中なのに。

じつは当スペース、もともと飼育展示係の学習室として使われていたものらしい。内容の充実度にも納得だ。
動物園に学習室なるものがある(ところもある)と知れたのが、動物園素人(=僕)にとっては驚きと喜びであります。

なお図書館では毎月第2日曜日に飼育展示係による読み聞かせも行われているとか。
素晴らしい! 子どもにとっても飼育展示係さんにとっても得るものがなんと大きいことだろう。

魂は細部に宿る・・・!
この言葉をもって旭山動物園訪問記という物語のしめくくりとしたい。

長い時間おつきあいいただきまして、本当にありがとうございました。

130919_53.jpg

余談だが、旭山で最後に撮った動物の写真が野生のカラス(ハシボソ?)だった。
それもなんか旭山っぽいね。

旭川市旭山動物園 公式サイト
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/

【目次 1・総論 2・デザイン 3・動物 】

関連記事
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する