すべての子どもに送りつけたいキリンの本みつけたった

初めてそれを意識したのは「スラムダンク」を読んでいるときだったか。
「寄生獣」「幽☆遊☆白書」「鋼の錬金術師」「うしおととら」のときもそうだった。マンガだけじゃない。小説なら「銀河英雄伝説」か。ノンフィクションなら瀬田貞二、斎藤敦夫、島泰三・・・。挙げれば枚挙にいとまがない。

あとで振り返ったとき、「あの本がターニングポイントだった」と思うような本を読んでいる最中は、いつも同じ気持ちでいた。
つまり、「早く読みたい、一気に、一瞬で内容を理解したい。でも読みたくない。いつまでもこの未知を既知にする驚きの中にいたい」。
これも、そういう本だった。


■「約束しよう、キリンのリンリン―いのちを守るハズバンダリー・トレーニング」
  森由民・著(フレーベル館)
4577040972約束しよう、キリンのリンリン
 ―いのちを守るハズバンダリー・トレーニング
 (フレーベル館ジュニア・ノンフィクション)

森 由民
フレーベル館 2013-04

by G-Tools

★★★★★(大満足)

児童書である。キリンのトレーニングの話だ。

動物園のキリンは、健康管理のために蹄を削ったり、血を抜いたりしなければならない。でもキリンは臆病で神経質な動物で、人間が近づくことを許さない。いや、野生動物とはそういうものだ。他の動物に触れるときは、食うときか、食われるときか。
だから必要なとき動物に触れるためのトレーニングがある。例えば毎日ある合図で座る訓練をしていれば、検査のときその合図をすればすぐに座る。

本書は、秋田市大森山動物園の飼育員、柴田典弘さんが、「ハズバンダリー・トレーニング」という技術を用いて、キリンのリンリンたちの命を守るために奮闘した物語。
柴田さんは力いっぱい守る方法を考えた・・・。誰も失わないように・・・、誰も遠くにいかねェように.。柴田さん、あんたリアル「モンキー・D・ルフィ」だよ。

児童書だからって舐めちゃいけない。いや児童書だからこそ手抜きなど微塵もない。
子ども達は無垢だ。初めて教わったことはその後の人生に大きな影響を与える。幼少期に親から教わって信じていたことを友だちの前で言ったら恥を掻いた、なんていう経験はよくある。
繰り返そう。児童書だからこそ手抜きはない。だって相手は子どもだよ?

ジェットコースターのような本だった。
「はじめに」から「あとがき」まで、一本のレールの上をまさに<疾走>した爽快感があった。
時と場所が行ったり来たりしたり、比喩に溢れていたり、思わせぶりだったりすることがない。時系列に具体的に書かれている。

子どもたちにとっては「巧い」文章である必要はない。大切なことは内容と、その内容がストレートに理解できることだ。
動物園に行く機会がある子には、つまりすべての子どもだけど、ぜひ読んで欲しい。きっと動物の見方が変わる。もっと面白くなる。

ところで僕は、児童書の文章に「巧い」は要らないと言った。
でもね、キリンをはじめ野生動物や命のこと、動物園について、組織のあり方、技術論、ひとりの男の物語他、さまざまなことを織り交ぜながら、たぶん誰もが簡単に「ワカル」。これって本当はどういうことかワカル? 超絶凄い。

これこそザ・児童書。
読みやすい、わかりやすい、盛りだくさん。そしてなにより、読む者に強い影響を与え、その人生を豊かにする一冊。


ブログ動物園ライター・森由民の勝手に行くゾ~ (著者のブログ)
http://ameblo.jp/his-zoo/


関連記事
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する