ふれあう心と命の大切さ

「ひろば北九州」内の連載の書き写しシリーズです。
始めた理由は→コチラ。読んでいただけると嬉いっす。


今回は「ZOOっとそばに到津の森」(「ひろば北九州」2011年5月号)分!


ひびき動物ワールドといえば、地元北九州市民にはお馴染みの都市公園、グリーンパーク・響灘緑地にある動物園です。経営母体は到津の森と一緒らしいです。
交流はあるのかな。よくわかんないけど。でも経営母体のWEBサイト見ると、組織的には一緒なんだなってことはわかります。
http://www.kpfmmf.jp/corp/

文章を読んでも、実際に訪問しても、いろいろ課題があるんだろうなあと感じます。
でも、文中にある「飼育員にはゴールがない」という言葉が、なんだかとても熱いです。

これは到津の森の岩野園長が「動物園とはずっと描き続ける絵みたいなものだ」と言うのと同じ意味やよね。
上には上がいる。我々はまだ未熟だ。もっとよくなれる。
この学びの姿勢をもつ者だけが、ゴールなどないと言い切れるのだと思います。

最後に僕も言い切ろう。ウォンバット超こえー!!wwwww

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「ふれあう心と命の大切さ」

文:到津の森公園 ひびき動物係 久永秀徳


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 平成元年、若松区に市民の憩いの場として、また、命の大切さを学ぶ教育的な場として「ひびき動物ワールド」が開園した。今では到津の森公園と同じ組織で運営する動物園だ。オオカンガルーとシマオイワワラビーの各6頭で開園したが、今ではウォンバット1頭を含め、合計3種類約200頭のカンガルー王国となった。今年(※2011年)は国内でも珍しいケナガワラルーが仲間入りする予定だ。

 開園後、飼育員募集の広告を目にした私は「アフリカ野生動物保護監視員になりたい」という子どもの頃のおぼろげだった夢が突然よみがえった「夢を叶えるにはここしかない」と応募し、平成2年に採用された。しかし、すぐに理想と現実の違いに気付かされた。実際の業務はかなりハードで、動物に癒されるどころか、日々管理に追われる毎日だった。その中でも、最初に苦労したのが動物たちの繁殖や訓練だった。

 カンガルーの繁殖では、栄養のある餌を与え、環境を少しでも自然の状態に近づけることでストレスを緩和させた。また、むやみに近づかないよう最新の注意を払い、注意深く動物と接したことを覚えている。

 オオカンガルーのふれあい空間は国内でも類を見ない。そのため、人に馴らす訓練は困難を極めた。もともと野生のカンガルーは、人が近づくことさえ難しい。逃げ回るカンガルー。蹴られたり、引っかかれたりする私たち飼育員。奮闘の連続だった。訓練の間、様々な原因の死に直面し、辛く悲しい思いやうまくいかない悔しさで涙することもあった。

 しかし、開園3年目にして、ようやく繁殖も安定し、1ケタからはじまった頭数も2ケタへと順調に増えていった。特にシマオイワワラビーは日本ではひびき動物ワールドにしかいない貴重な存在(※2013年現在、他園にもいます。後述。)だったため、その繁殖の成功に安堵した。危惧していたオオカンガルーのふれあいも軌道に乗り、まずは目標の達成を感じた。

 動物の飼育計画がひと段落した頃、新たにウォンバットを導入することになった。関係者からは「ぬいぐるみのような身体」「いつも昼寝をしている」「のんびり屋」などの話を聞き、その珍獣の来園を待ちわびた。
 彼らははるばるオーストラリアから到着。まんまるな体つきが愛らしい。翌日は現地の園長から市長への引き渡しの予定だ。式典では雌雄の2頭がそれぞれ入った箱を運動場内に設置し、開始と同時にその蓋を開け、お披露目することになっていた。着々と準備が進んでいた本番直前、現地の園長の発した言葉に、みんな驚きの表情を隠せなかった。

「雄は元気が良すぎて、襲ってくることがあるので注意してほしい」

 雄の蓋を開けるのは市長だった。急遽(きゅうきょ)、私は市長の隣へ移動して不測の事態に備える。「体当たりなのか、噛みつくのか」この時点ではどのように襲ってくるかも分からない覚悟を決めて式典に臨んだ。結局、その時は長い旅の疲れのためかウォンバットの方が緊張した面持ちでゆっくりと登場し、事なきを得た。

 しかし、その後、私は彼らの本当の姿を知ることになる。数時間後、環境に慣れた2頭は血だらけになるほど激しく喧嘩を始めた。止まらない程の激しさがきっかけで、飼育する獣舎は分けることになった。

 彼らの導入の目的は繁殖。動物園での繁殖は世界的にも珍しいとされていたが・・・・・・。普段一緒にできないなら繁殖時期を見極めてお見合いするしかない。その時から雌の発情期を特定する観察が始まった。発情時期が確認できたら雄と一緒にする。その際は雌の安全を確保するために2頭から目が離せない。試行錯誤の中、交尾体勢の確認が取れたもののうまくいかない。その後、あきらめず何度も挑戦し続けたが、間もなく担当替えによりウォンバットの飼育から離れた。結局、彼らの繁殖は一度も成功しないまま今に至る。

 それからは飼育現場と少し距離を置きながら、後輩の指導や動物に関する研究に取り組んだ。10年間ポニーを担当したあと、再びカンガルーの担当に戻った。しかし、この時には、過剰繁殖が原因と考えられる育児放棄や死亡が相次いでいた。

■動物たちの代弁者の役割を忘れないよう

 頭数が多くては、放し飼いのため1頭1頭の個体管理が難しい。まずは、強くても弱くても十分餌が取れるように食や住環境の改善を行った。また、育児放棄された子は、その命を救うのはもちろん、まだ実現していなかったふれあいを目標とした人工哺育に切り替えた。経験もなく幾度も失敗を繰り返し、後悔と反省の連続だった。しかし、半年後なんとか軌道に乗り。人工哺育第1号を群れに戻せた。こうして今では数十頭余りの人工哺育の子を中心に来園者とのふれあいができるようになった。

 これまでの飼育人生の20年間、繁殖や訓練にと何度と繰り返してきたが、飼育員にはゴールがない。

 動物と接した仕事をするものとしてみなさんに伝えたい。とかく動物の愛らしさだけが取りざたされるがその裏にある事実にも目を向けてほしい。赤ちゃんはとてもかわいい。しかし、産まれてくる命もあれば死んでいく命もある。飼育員も死に直面することはとても辛い。しかし、泣いて悲しむのではなく、2度と同じ原因で死亡させないよう努力する。

 まれに動物が人間を襲うことがある。だが、それは必ずしも動物だけの責任ではない。逃げ場を失った動物は攻撃し、人がひるんだ隙に逃げるしかない。人にも事情があるが、動物にも様々な理由があることを少しでも理解できれば、人と動物との共存も夢ではないのかもしれない。

 現代ではペットが飼えない家庭が増えている。だからこそ、飼育員は動物の生態や素晴らしさ、扱い方などを正確に伝えていきたい。
 私は言葉を持たない動物たちのメッセージを伝える代弁者としての自覚を持ち、その役割を忘れないよう心がけて仕事に取り組んでいきたい。


【到津の森公園(小倉北区上到津)】
 前身は西鉄が経営する到津遊園。昭和7年開園。遊園地に併設された動物園として市民に親しまれたが、平成10年、経営難を理由に閉園方針を発表。だが、26万人分の存続署名が集まり、北九州市が引き継ぎ、平成14年、到津の森公園として再開。
 自然に、動物に、人間にやさしいをコンセプトに、約100種500頭の動物を展示。また、「市民と自然を結ぶ窓口」として、市民がエサ代などを寄付できる制度、エサの準備などに協力する市民ボランティア制度もあり、市民と一体となった動物園づくりをしている。

web http://www.itozu-zoo.jp/

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余談ですが、2012年3月30日、ひびき動物ワールドから多摩動物公園(東京都)に、シマオイワワラビーのオス2頭メス2頭の計4頭が引っ越ししました。
それまで、日本ではひびき動物ワールドでしか飼育されていなかったので、公開は多摩動物公園が2園目だそうですよ。
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