気がつけば猛獣の飼育員

「ひろば北九州」内の連載の書き写しシリーズです。
始めた理由は→コチラ。読んでくれます?


今回は「ZOOっとそばに到津の森」(「ひろば北九州」2010年12月号)分!


いやー凄い。なにが凄いって中上さんの実家環境です。イノシシにタヌキにキツネってどこだよw 「今でも携帯電話の電波がほとんど入らない」wwwww
いやこの文章は2010年のものですから、つってそんな変わんないか! そんな変わんないか!!

中上さんは猛獣担当ゆえに、プライベートでも鍵の閉め忘れが気になったり、夢にまで見たりすると言う。
職業病と俗に言われるアレだけど、僕にはそういうのまったくないからプレッシャーが違うんでしょうね。単に僕が無責任なだけではないと思います。(希望)
しかし起きたら「どうしようもない悲壮感」ってw 「夢でよかった」じゃない始末wwwww

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「気がつけば猛獣の飼育員」
文:到津の森公園 飼育展示係 中上安紀


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 いま私はライオンの飼育を担当しています。かれこれ十数年働いていますが、思えば旧到津遊園で働き始めた時は、オタリア(アシカの仲間)やアザラシ、オオカミ、シマハイエナを担当し、到津の森公園では、トラやライオンを中心にキリンやシマウマと、比較的大きな動物を担当しています。しかし、私自身の体はとっても小さいのです。
 そんな私。動物園で働いているので、子どもの時から動物が大好きだろうと思われがちですが、そんなに動物に興味はありませんでした。「小学校の先生になる」「博物館で戦国時代の研究をする」「恐竜の化石を掘る」。これらが小・中・高とそれぞれ思い描いてきた将来の夢です。子どもの時の夢には、どこにも動物の「ど」の字もでてきません。

 なぜなら、実家は小さい時から犬がいたり鳥がいたり、近所では畑にイノシシが出たり、タヌキやキツネは当たり前というような自然に囲まれた環境にいました。30年以上たった今でさえ当時とさほど変わりなく、今でも携帯電話の電波がほとんど入らないような所です。動物を身近に感じすぎていたためか、興味の対象にはならなかったのです。

 興味を持ったのは、高校2年生の時に、父に誘われるまま連れられて行った小倉競馬場の出来事でした。その日のメインレースで優勝した馬が、実は3度もの骨折を乗り越えての優勝だったのです(分かる人には馬の名前が分かると思います)。
 動物に興味のなかった私でも、馬の世界では1度の骨折で走れなくなることは何となく知っていました。そんな中、3度骨折したにもかかわらず、その馬は走り、優勝までしたのです。正直、今までいろんな壁にぶつかった時に逃げることばかり考えていた私には、この馬の生き様が深く心に残りました。この馬との出合いがきっかけで、私は動物の世界に入ろうと決心しました。

 そうして動物園で働き始めた私。初めてトラやライオンの担当になった時は、それはもう緊張しました。トラやライオンは一般に「猛獣」と呼ばれ、その動物を担当する責任感と共に、何といっても「安全」には格段の配慮が必要となります。

 猛獣を担当すると「安全」に対する意識の高まりのためか、必ず通る道があります。草食動物の担当者は、路地などに青々と生い茂っている草を見ると「おいしそう」と思わず言ってしまいます。一般の人からすると「何それ?」という感覚かもしれませんが、飼育員はついつい担当動物の目線で見てしまうことがあります。同じようにトラやライオンを担当する私は、数ヶ月に1度くらい担当している猛獣が脱走する「夢」を見るのです。夢の世界なので設定などはハチャメチャですが、夢を見ている時はそれが現実。どうしようもない悲愴感で目が覚めます。

 それだけいつも頭のどこかで「安全」について気にしているということかもしれません。そんな夢を見るたびに「夢で本当によかった」とつくづく思うのです。やはり、脱走の原因となる鍵には人一倍敏感になります。「鍵をかけ忘れていないか」と心配になった時は、何度でも戻って鍵を確認します。そのため、家でも家の鍵や車の鍵などを何度も見に行くことがあり、あまりにも頻繁に行くので、家族に「大丈夫。閉まってるよ」と冷ややかな言葉をかけられます。

 来園者からもトラやライオンは「危険」な動物との思いから、「一緒の部屋に入るのですか」「こわくないですか」とよく質問をいただきます。危険な動物の世話はどうしているのか。

■常に「こわい」という気持ちを忘れずに

 まず「一緒の部屋・・・」の答え。トラやライオンの獣舎には、寝室と運動場があって、朝は寝室にいる彼らを運動場に出します。この時、寝室から運動場に続く扉を開くための取っ手が寝室の外から操作できるように工夫されているので、彼らと一緒に中に入ることはありません。そして彼らが運動場に出ている間に、空になった寝室の掃除を済ませて。餌に肉を置き、夕方また同じように扉を操作して彼らを寝室に戻します。

 このように普段は動物に直接触ることが全くないので、トラやライオンの飼育員はある意味で一番飼育員らしくないかもしれません。その一方で、触らなければならない時もあります。病気や怪我をした時は、麻酔で眠らせてから一緒の部屋に入って治療をするのです。眠っているとはいえ一緒の部屋は緊張も一塩です。
 次に「こわくない・・・」の答え。はっきり言って「こわい」です。この「こわい」という感情は、長年担当しているとだんだん慣れて薄れてきます。慣れてくるとつい「これぐらい、まあいいか」という気持ちになりがちです。まさにこの慣れた時が一番危ない時です。そのため、今でも初めて猛獣を担当した時の気持ちを忘れずに、「こわい」という気持ちを持ちながら飼育することを常に心がけています。また、先に書いた時々見る夢が改めて気を引き締めさせてくれます。

 トラやライオンは、その「強さ」の象徴のために、野生では毛皮目的の密猟などによって非情に数を減らしています。トラは100年前に10万頭いたものが、現在では3500頭以下と言われてます。ライオンもまた「野生の王国」といわれるケニヤにいるものでさえ、このままでは20年後にはいなくなると最近のニュースで流れていました。どちらも絶滅の危機に瀕しているのです。
 私は、飼育員として責任をもって動物の世話をするのはもちろんのこと、このような野生のトラやライオンの現状を伝えることも、担当者としての私の大事な使命だと思っています。「小学校の先生になる」という幼い頃の夢が、「動物の先生」に形を変えて適っているのですから。


【到津の森公園(小倉北区上到津)】
 前身は西鉄が経営する到津遊園。昭和7年開園。遊園地に併設された動物園として市民に親しまれたが、平成10年、経営難を理由に閉園方針を発表。だが、26万人分の存続署名が集まり、北九州市が引き継ぎ、平成14年、到津の森公園として再開。
 自然に、動物に、人間にやさしいをコンセプトに、約100種500頭の動物を展示。また、「市民と自然を結ぶ窓口」として、市民がエサ代などを寄付できる制度、エサの準備などに協力する市民ボランティア制度もあり、市民と一体となった動物園づくりをしている。

web http://www.itozu-zoo.jp/


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使命を感じる仕事って素晴らしい。

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