ゾウの飼育と動物園

「ひろば北九州」内の連載の書き写しシリーズです。
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今回は「ZOOっとそばに到津の森」(「ひろば北九州」2010年8月号)分!


いつも園内で見かける中ノ園さん。この記事のようにゾウとの絡みで見かるほか、腕にフクロウのっけていたり、トラ舎に現れたり本当によくその姿が目にとまります。
でも、メガネをかけてちょっと冷たい感じのする風貌から、どーにも話しかけづらい。いや仕事中に何の無駄話をしかけんだっちゅう話ですけども。
文章読んだらすげー理屈立つ方なんですね。理知的。想像以上にクール。だがしかし・・・それ以上に熱い!

野生動物とは、家畜とは、家畜化動物とは・・・。ゾウ使いなどの先人への敬意。その先人達の業績に見合う責任を自らが果たせているか・・・。
熱いなー、この血潮。最後の一文にぞくっとした。惚れてまうわ。

関係ないけど中ノ園さんって、2005年頃までの映像ではだいたいショートヘアでメガネかけてない爽やか青年風なんです。でもあるときからメガネで髪型もちょっと特徴ある感じになりました。なんかあったんやろか。

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「ゾウの飼育と動物園」
文:到津の森公園 飼育展示係 中ノ園(なかぞの)浩二


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 到津の森公園では現在、2頭のゾウを飼育している。種類はセイロンゾウ。ともに30歳を超えるメスである。この2頭と私は当園の前身である到津遊園時代からの付き合いである。私は入手して18年(※2011年時点)になるが、入社の翌年からゾウの担当となり、それからずっと、ということになる。

 以前、私は競馬場で厩務員(きゅうむいん)をしていたことがあり、「ゾウという生き物もウマに通じるものがある」と感じていた。初めて担当した頃は「まずは動物にナメられないようにしよう」と心がけていたことを覚えている。

 当園のゾウは直接飼育という飼育方法をとっている。これはゾウと共に獣舎に入り、清掃やエサやり、トレーニングなどを行うという方法である。厩務員をしていた私にとっては、ウマと同様のごくごく当たり前の飼育方法である。動物に対して細やかなケアができるとともに、心理状態を察知するのにこれほど優れた飼育方法は他にないと思っていた。

 ところが、相手はウマではなくゾウである。ことにオスのゾウには「ムスト」と呼ばれる凶暴になる時期がある。この時期になると、誰も手を付けられない。「ムスト」でなくても、あの小山のような巨体にアタックされたらひとたまりもない。また、当時ゾウの飼育作業中の事故が毎年のように報告されていた。その対策のために、直接飼育から間接飼育へと変わりつつあった。

 この間接飼育というのは人の安全を第一に考えた飼育方法で、飼育員はゾウと直接には接しない。エサの管理や清掃はゾウを隣室に移して行い、観察や治療も安全な場所で行う。猛獣と同様の飼育方法である。
 安全性を考えるとゾウの間接飼育をするのは仕方がない。当時の私は他園での事故や飼育状況を知り、ゾウの危険性を改めて認識した。そしてこれまでの認識の甘さを実感した。

 直接飼育と間接飼育のどちらの飼育方法が良いかについては、一概には言えない。しかし、当園では直接飼育でゾウを飼っている。「なぜ危険性のある直接飼育を行うのか」。疑問に感じる人がいるかもしれない。

 一般に、動物園にいる動物は野生動物である。ペットのイヌやネコ、家畜のウシやウマとは一線を画する。もちろん、野生動物の飼育にはペットや家畜の飼育方法が基盤にあるが、野生動物には飼育マニュアルがない。では、ゾウはどうだろう。アジアではゾウ使いにより使役動物として飼育されるゾウは、野生動物と家畜の中間に位置し、家畜になる途上の段階の「家畜化」動物と言われる。

 家畜であるウシやウマは繁殖を制御できるが、ゾウは制御できていない。飼っていたメスのゾウが、山から下りてきたオスのゾウと交尾し、妊娠した例もある。また。飼っていたゾウを山に返したら、そのまま定着し、後に仔ゾウを連れて帰ったという話もあるなど、家畜では考えられないことがおきている。

 また、ヤギやブタがよい例だが、家畜と野生とでは明らかに見た目が違う。しかし、ゾウは飼われているものと野生のものでは外観にほとんど差がない。こうした観点からも、ゾウは家畜でなく、「家畜化」動物なのである。

 ゾウ使いのいる国では、ゾウを飼育するためのマニュアルはないが、ゾウを飼育するための学問があり、これをゾウ学(コッチャサート)と呼ぶ。ゾウの飼育と使役の歴史は古く、今から4000年以上前に遡(さかのぼ)る野生ゾウでも「家畜化」できる技術があったので、完全に家畜にできたかもしれない。しかに、それにもかかわらずあくまで「家畜化」動物に留まったのは、「人も動物も自然の一部であり搾取するものではない」というアジア独特の自然観も複雑に絡んでいたためではないだろうか。

 話を元に戻して、昔の動物園でゾウはどのように飼育されていたのだろうか。


■息遣いを間近に感じていたい


 もともと動物園は、そのコレクション性や権威の象徴として西洋の王室の所有物として出発した。その歴史は19世紀から始まった、その頃からゾウを飼育していたとしても、たかだか300年程度の経験である。ということは、4000年もの歴史があるゾウ使いの飼育技術にかなうはずもない。アジアの先人達の努力や技術には頭が下がる。

 現代では、野生動物や自然の保護が叫ばれ、動物園の役割のあり方も変わってきている。啓発の場である動物園は、自然に対する経緯や先人達が培ってきた自然観も含めて来園者に伝えることが求められているが、それを実行できているだろうか。

 ひと昔前の光景を想像してほしい。山仕事を終えたゾウ使いたちが、ゾウをねぎらい、エサを与える。ゾウの息遣いを感じながらたき火を囲み、食事をしながら四方山話(よもやまばなし)をしている。そこには自然への畏敬の念があり、こうした場を通して、人々はゾウについて脈々と語り継いできたのかもしれない。それはまさに自然の語り部といってよいだろう。
 動物園の飼育員はゾウ使いになることはできない。しかし、ゾウを直接飼育することで先人達の自然観に触れることができる。ゾウにエサを与え、それを食べるゾウの横に立っていると、ゾウとともにたき火を囲んでいた昔のゾウ使いの姿が自分にオーバーラップしてくる。そして、彼らが何を考えていたのか、私は想像してみるのだ。

 このように、ゾウの息遣いを間近に感じられるところにいることで、初めて自然観や自然保護の意義を語ることができるのではないだろうか。また、それを聴いた人の心を動かすこともできるのではないだろうか。それが、動物園に直接飼育が必要とされる理由かもしれない。
 そうすることで、動物園は現代の自然の語り部になれると、私は確信している。到津の森公園ではゾウを直接飼育している。


【到津の森公園(小倉北区上到津)】
 前身は西鉄が経営する到津遊園。昭和7年開園。遊園地に併設された動物園として市民に親しまれたが、平成10年、経営難を理由に閉園方針を発表。だが、26万人分の存続署名が集まり、北九州市が引き継ぎ、平成14年、到津の森公園として再開。
 自然に、動物に、人間にやさしいをコンセプトに、約100種500頭の動物を展示。また、「市民と自然を結ぶ窓口」として、市民がエサ代などを寄付できる制度、エサの準備などに協力する市民ボランティア制度もあり、市民と一体となった動物園づくりをしている。

web http://www.itozu-zoo.jp/

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書き写しててめっちゃおもろかったっす。そしてとても勉強になりましたー。
僕もなんかの語り部になろう!!(聞き手はいない予定。)

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