動物園の動物は、どこから来るの?

以下は「ひろば北九州」内の連載を書き写したものです。
なんでそんなことやってんの? ですって?
なんででしょうね(笑) 
理由を一生懸命考えてみました。→結果


今回は「ZOOっとそばに到津の森」(「ひろば北九州」2010年6月号)分!


動物園の動物はどこから来るのか。よく考えると少し哀しくなる話かもしれません。
種の保存とかって、僕たちニンゲンがどの口で言うんだとも思います。
でもどんだけ不遜でもやらないよりはマシだ。そして何も悪いことばかりじゃない。

動物たちは、繁殖のためにあっちに行ったり、こっちに来たりする。
つまり他都市の動物園に行っても、もしかしたら「親戚」に会えるかも?ってことなんですね。
動物園に足を運ぶ子どもたちにおかれましては、ここから動物に親しみをもつとおもろいんよ。
動物を種類で見なくてさ、個体で見るちゅうこと。
マリア(アミメキリン)に婿入りしたトーマの実家ってどんな家族なんだろう? 神戸の王子動物園に嫁入りしたラブ(チャップマンシマウマ)はうまくやってんのかな? そういう目線で見始めたなら、動物園はべらぼうに面白くなる。いやマジで。
そしてこれは決して擬人化ではない。


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「動物園の動物は、どこから来るの?」
文:到津の森公園 獣医師兼飼育係 津田能理子


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 子どもの頃、動物園で撮って貰った私の写真は全部後ろ姿です。動物園で働くようになってから気づいたのですが、動物園で撮る記念写真は、動物をバックに笑顔で撮るものなんですね。幼い頃から動物が好きで、よく地元大阪の動物園に連れて行ってもらいました。動物園の門をくぐった途端に親を振り返りもせず、一目散に動物に向かって走っていく子どもだったそうです。おかげで私の写真は、柵にしがみついて夢中で動物を見ている後ろ姿ばかりです。

 小学校の夏休み、動物園のサマースクールに参加しました。飼育体験をしたり、動物園のことを学んだりした中で、一本のビデオに衝撃を受けました。オランウータンの保護施設の映像で、今でも鮮明に覚えています。森林伐採で住みかを失ったり、密漁で親を失ったりしたオランウータンがたくさん保護されていました。私が野生動物に関わる仕事に就きたいと思うようになったきっかけでした。
 ただただ動物が好きで動物園に通っていた私に「野生動物」というものを意識するきっかけをくれたのも、その野生動物をとりまく厳しい現状を教えてくれたのも、動物園でした。動物園は多くの人が訪れるところです。だから、動物園でこういうきっかけを得る人は私だけではないはずだと感じ、現地で保護活動に携わる仕事よりも、自分にきっかけをくれた動物園で働きたい、と考えるようになりました。当時はまだ女性の飼育員は少なく、どうしたら動物園で働けるだろうかと考えた末に、獣医師になるために大学の獣医学科に進みました。

 長年の夢が叶って、大学卒業後、到津の森公園で獣医師兼飼育員として働き始めて四年になります。

 園内にいると皆さんから色々な質問を受けます。子どもたちから「動物園の動物はどこからくるの?」と聞かれることがあります。「この動物はアフリカから捕まえてきたの?」「どうやって捕まえたの?」と。
 答え。『動物園の動物たちのほとんどは動物園から来るのです』

 動物園ではブリーディングローンといって、繁殖のために他の動物園と動物の貸し借りをすることがあります。この繁殖のためにする動物の移動は、動物園の仕事の中でも大切な仕事の一つです。
 今年一月、飼育員が総出で待ち構える中、開園時間前の当園に、大型車に載せられた大きな鉄の箱が到着しました。雨よけのシートが外されると、金網の窓から大きなシルエットこちらをのぞいています。身長四メートルのオスのアミメキリン。名前はトーマ。兵庫県の動物園からはるばる陸路で運ばれて来ました。
 当園にはマリアという名前のメスのキリンがいますが、一緒にいたオスのキリンが二年前に亡くなって以来、ずっとひとりぼっちでした。トーマは、そんなマリアのお婿さんとしてやってきました。

 キリンのような大きな動物の輸送は、動物園でも難しく、最も気を遣います。しかし、到着したトーマは落ち着いている様子で、輸送箱を車から降ろすために箱ごと吊り上げられている間も暴れません。一トンもある箱をしっかり固定した後、いよいよ蓋を開けます。緊張の瞬間です。「おびえて箱から出てこないかもしれない」「興奮して急に飛び出してきたらどうしよう」・・・・・・色々なことを心配してしまいます。
 しかし、こちらの不安をよそに、トーマは開けられた蓋から顔を出すとゆっくりあたりを見渡してトコトコとすぐ出てきました。そして新しい獣舎を確認して、そのまま中へ入り、用意してあった餌をムシャムシャと食べ始めました。トーマのこの穏やかな性格のおかげで、マリアとのお見合いも順調に進み、一週間後には二頭仲良く運動場に出られるようになりました。

 このように動物を搬入することもあれば、一方では、今いる動物を他の動物園に送り出すこともあります。キリンの輸送が落ち着きほっとしていたのも束の間、三月にはシマウマの搬出が待っていました。
 シマウマのラブは当園生まれで、両親と同じ群れで生活しています。しかし、野生で考えれば、そろそろ生まれた群れを出て、新しい群れで子どもを産む年齢です。そこでラブは神戸の動物園にお嫁に行くことになりました。

■未来へ動物の命を繋いでいく

 先ほどのキリンの搬入のように動物を受け入れる側は、動物が新しい環境になじめるように万全の準備を整えなくてはいけません。逆に動物を送り出す側には、ケガの内容に輸送箱に入れる、という責任があります。そこで今回は、事前に輸送箱を設置し、毎日その中で餌を食べさせて慣らそうとしました。搬出当日は、いつも通り箱の中で餌を食べている間に扉を閉め、そのまま運び出すという計画です。努力の甲斐あって、何とか箱に入ってくれたラブは神戸に無事旅だって行きました。

 動物園で生まれた動物たちは、他の動物園にお嫁に行ったり、お婿に行ったりします。成長した子どもを親離れの時期になってもそのままにしておくと、親と闘争になるうえ、同じ血筋ばかりが増えて、その次の世代を繁殖させることができなくなってしまうからです。
 昔は自然の生息地から珍しい動物を連れてきて、動物園で展示していた時代もありました。しかし「種の保存」を大きな役割の一つに掲げる現在の動物園では、動物は動物園の中で繁殖させ、維持していかなくてはなりません。そのため、国内の動物園同士で、時には海外の動物園とも、動物を移動させ、次世代の動物たちを増やす努力をしています。未来の子どもたちが、私たちと同じように動物園で身近に動物を見ることができるように、動物園の中で命を繋いでいくために大切な仕事の一つです。

 まだまだ駆け出しの私にとって今回のような大きな動物の移動は初めてで、先輩たちに頼るばかりでした。しかし、休む間もなく、二月、三月にはロバとプレーリードッグに赤ちゃんが生まれ、四月には北海道の動物園からレッサーパンダが、宮崎の動物園からニシムラサキエボシドリが、新たに仲間に加わりました。私が担当するキリンのマリアとトーマにも近い将来赤ちゃんが生まれ、皆さんに見ていただけたらという期待と責任を感じて今頑張っています。


【到津の森公園(小倉北区上到津)】
 前身は西鉄が経営する到津遊園。昭和7年開園。遊園地に併設された動物園として市民に親しまれたが、平成10年、経営難を理由に閉園方針を発表。だが、26万人分の存続署名が集まり、北九州市が引き継ぎ、平成14年、到津の森公園として再開。
 自然に、動物に、人間にやさしいをコンセプトに、約100種500頭の動物を展示。また、「市民と自然を結ぶ窓口」として、市民がエサ代などを寄付できる制度、エサの準備などに協力する市民ボランティア制度もあり、市民と一体となった動物園づくりをしている。

web http://www.itozu-zoo.jp/

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